子供の病気

子どもの風邪(上)

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むらた小児科医院(金沢市)村田祐一院長



免疫のない乳幼児は要注意


 これから寒くなる季節を迎えると、風邪の患者が増えてきます。一口に風邪といっても、その中にはさまざまな病気が含まれています。今回は、なぜ風邪をひくのか、について説明します。

 風邪の症状には、少し鼻水が出るものの、体を温めればすぐに症状が改善する軽いものから、病原体が体に入り込んでしまい、高熱が出て入院治療が必要な重いものまであります。

 病原体には細菌やウイルスなどがあります。これらが体に入ることを「感染」といいます。感染しても実際に発病するのはごく一部で、大半は体の防衛機能が働くため、発病を食い止めてくれます。しかし、体力が弱っていたり、病原体に対する免疫がなかったり、一度にたくさんの病原体が入ったりすると、発病を食い止めることが出来ずに発病します。

 免疫とは体の防衛機能の一種で、一つひとつの病原体を認識しておいて、2度目以降に侵入してきたら即座に対応し、病原体をやっつけるシステムです。乳幼児の場合、集団生活が始まるとよく風邪をひきますが、これは防衛機能である免疫がないためです。

 集団生活を始めると、それまでと比べてはるかに多い人たちと接するため、数多くの細菌やウイルスの感染を受けます。
乳幼児はこれらのウイルスに初めて感染することが多く、免疫を持たないため、次々と風邪などの病気にかかってしまうのです。重症となる前に、早めに掛かり付けの医師に診療してもらうことが大切です。

 しかし、小学校に入学するころにはほとんど病気にかからなくなります。それまでにさまざまな病気を体験して免疫を持つことにより、病原体を退治する方法を体が覚えるからです。

 次回は、風邪の予防方法などを紹介します。

20061111  読売新聞)



 子どもの風邪(中)

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むらた小児科医院(金沢市)村田祐一院長


予防接種で早めに免疫

 風邪の有効な予防法の一つに予防接種があります。病気に対する免疫を作り、病気にかかりにくい体にするのです。

 発病すると重症となる恐れのある病気の多くには、定期的な予防接種の制度がありますが、インフルエンザ、おたふく風邪、水痘などの予防接種も任意で受けることができます。これら任意の予防接種も出来るだけ受けさせるようにしてください。

 予防接種から免疫ができるまで約2週間かかりますので、インフルエンザの予防接種は流行期のすこし前に受ける必要があります。また、インフルエンザウイルスは変身しやすいのと、予防注射の免疫が長く続かないので、毎年接種する必要があります。

 日ごろから適度な運動と充分な睡眠を取るなど、正しい生活習慣も大切です。食事では子どもは好き嫌いが多いので、無理に食べさせるよりも好きな食べ物をうまく利用して、ビタミンなど栄養のバランスが取れた食事が取れるよう工夫してあげてください。

 また、皮膚を鍛えると病気に強い体になります。今ではなじみが薄いかも知れませんが、着替えの時に皮膚が少し赤らむ程度に乾布摩擦をしてください。アトピー性皮膚炎の場合は症状が悪化するので乾布摩擦は避け、代わりにお風呂から上がる時に水を掛けると効果的です。

 一度にたくさんの病原体が侵入するのを防ぐためには、〈1〉外出する時にはマスクを着用する〈2〉手洗い、うがいをまめにする〈3〉人ごみを避ける〈4〉部屋の湿度を高め、乾燥を防ぐ――といった心がけも大切です。家庭環境も重要で、親がタバコを吸う家庭では子どもが呼吸器系の病気にかかる例も多く、注意が必要です。

 次回は、風邪をひいてしまった場合の処置などについて説明します。

20061118  読売新聞)


子どもの風邪(下)

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むらた小児科医院(金沢市)村田祐一院長



診察受け薬の乱用控えて



 風邪にかかってしまったら、まず掛かりつけの医師に診察してもらい、原因を調べることが大切です

 風邪の約8割はウイルスが原因で、治療には以前、抗生剤がよく使用されていました。しかし、抗生剤は細菌感染症には有効ですが、ウイルスには効きません。例えば、以前は化膿性扁桃腺炎は細菌感染とされ、抗生剤が処方されました。しかし、その中にアデノウイルスが原因のものが多く見つかったため、不必要な抗生剤を処方するケースは大幅に減りました。

 最近は診察室にある診断キットで、インフルエンザやアデノウイルス、RSウイルス、連鎖球菌などさまざまな感染症を手早く、正確に診断できます。ウイルスによる感染症に対し、無差別に抗生剤を使うと大事な細菌まで死んでしまい、抗生剤が効かない細菌(耐性菌)が増えます。そうなると、いざという時に治療の妨げになることから、現在は適切な抗生剤の使用ガイドラインが作られています。

 インフルエンザも、発熱して48時間以内なら抗ウイルス剤で早く症状が改善するようになりました。ところが、世界で生産される抗インフルエンザ薬の半分以上が日本で消費されています。このまま無分別に使われると、抗インフルエンザ薬の効かない耐性株の出現が危惧(きぐ)されます。抗ウイルス剤も、抵抗力の弱い人や持病を持った人に限って使用することが大切です。

 発熱した場合の対応ですが、基本的には、発熱によって体の防衛機能が活発に働きだすので、薬で無理に解熱させることはよくありません。まずは冷やすことが大切です。しかし、それでも熱で十分な睡眠や休養が取れない時は薬で熱を下げてください。発熱で水分が不足しがちになりますので、水分を十分に与えることやビタミンCなどの栄養補給にも気をつけてください。

2006122  読売新聞)