日常臨床では子供同士ぶつかったり、

ころんだりして歯がまるまる一本抜けてしまったり、

歯が折れた、ボール等で歯を強打しという事にたびたび遭遇します。

今回は
子どもの歯の外傷(がいしょう)についてお話しします。



★抜けても元通りになる可能性もあります。

抜けた歯を、元通りに治すことができるということをご存じでしょうか。

歯の根の表面には歯の根を取り囲む軟組織(歯根膜)があり

その部分ができるだけ生きているうちに早く元の骨の穴に戻す事できれば

抜け落ちた歯でも、根は元どおり骨にくっつきます。

また一度断裂した神経が再びつながることもあります。

しかし歯が乾燥してしまっては、治療成績が格段に落ちてしまいますし、

症例によっては不可能なこともあります。

子どもの受傷後そばにいらっしゃった方の的確な処置が大切になってきます。


★歯が抜けてしまった時は周りの大人の対応が大切です。

子どもたちの歯の外傷は、人や物とぶつかって起こるので、

上の前歯が犠牲になりやすいです。

不幸にして子どもたちがそんな事故に見舞われた時、

その場に居合わせた大人がどういう処置を取るかで、

その後の経過は大きく左右されます。

大切なことは以下の通りです。

1)冷静になり歯のかけらや抜けた歯を探しましょう。

2)乾燥させずに冷たい牛乳(冷蔵庫ぐらいの温度)かまたは生理食塩水に浸しましょう。

水道水はあまり良いとは言えません。

水ですと浸透圧の関係から歯根膜の細胞が壊れてしまいます。

歯が砂などで汚れていて水道水で軽く数十秒ぐらい洗うことは大丈夫ですが、

不安ならばそのまま牛乳か生理食塩水に浸してください。

3)歯根膜(根っこの部分)には触らないでおきましょう。

触れていいのは歯の頭だけです。

根には歯根膜がついていますので歯根膜の組織が壊れてしまう恐れがあります。

4)できるだけ早く歯医者さんに持って行きましょう。

歯の外傷は時間との闘いという側面を持っています。

根の表面の組織は牛乳や生理食塩水に浸すことで乾燥状態よりは長く生きている

と言われていますが、できるだけ早く持って行きましょう。

5)歯の抜け落ちたところはガーゼ等を咬ませて止血しましょう。

牛乳や生理食塩水に浸して乾燥しないように持ってきてね

症状の経過で治療方法もかわります。

歯を元の位置に戻した後は抜けた歯と隣の歯を

金属のワイヤーや樹脂製の接着物で固定します。

固定期間は2?4週間です。

経過を幾度か見せていただき歯がくっついた時点で固定を取り外していきます。                    

その後は感染がおこらないか経過をみていきます。

感染してしまうと根の先に病巣をつくるようになります。

その状態はエックス線写真で確認ができます。

そのようになった場合は感染した神経を取り除き神経の替わりに人工の詰め物を行います。

定期的に診せていただくとよいと思います。


★折れた歯も治せる可能性があります。

今、歯科の世界では接着の技術が大変な進歩を遂げ、

折れた歯のかけらを元のところにつけることができるようになりました。

歯のかけらが見つからなかったときでも、歯科用の合成樹脂で使って、

元の状態とほぼ同じように治すことができるようになりました


★歯を軽く打っただけでも安心しないでください。

歯の場合、「軽く打っただけで、子供もすぐに泣きやんだから」で、

あまり安心はしないで下さい。

その時は何事も無かったかのように見えていても、何日、あるいは何ヶ月もしてから

例えば歯が変色したり、根っこの先に病巣を作っていたり・・・というようなことは、

決して稀ではないからです。

トラブルの大小に関係なく、歯を打ったというような場合は、

歯科医の診断と今後の注意などをおききになっておかれた方がいいと思います。


歯の外傷は活動的となる1-4才および78才頃に多いと言われています。

お父さんお母さんには注意していただきたい時期といえます。


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